自分のためにする事とは
自分のためにする事とは
YCスタートアップ講座
最後に自分のために何かをしたのはいつですか?
ここでの「自分のために何かをする」とは、食事、入浴、通勤のような日常的なタスクについてではありません。
また学校や会社、親、子供から要求されることでもありません。
自分の興味、理想、もしくは純粋な喜びのために、努力して成し遂げることです。

2021年、ポール・グレアム(Paul Graham, Yコンビネータ創設者)は放課後、家に帰るとすぐに自分の創作した物語の執筆を続ける息子を見て、胸が熱くなりました。息子が「自分のために何かをする」ことの楽しさを見つけたことに、深い感動を覚えたのです。
「自分のために何かをする」ことは、私たちが一般的に認識している仕事が徒歩だとすると、スケートボードに乗って進むようなものです。スケートボードは更に楽しく、前進も速いはずです。
自分自身のために何かをする場合、すべてにおいて100%の幸せが期待できるとも限りません。スケートボードを学ぶ時のように、ぶつかって倒れてしまうこともあるでしょう。非常に熟練したスケートボーダーであっても、事故につながる可能性はおおいにあります。
「自分のために何かをする」ことの過程において、順調な時は喜びを感じ、不調な時は不安や困惑を覚えるものです。
他人から与えられたタスクをこなす場合との最大の違いは、興奮と熱意を感じることです。
ポール・グレアムのエッセイのタイトル「A Project of One's Own」は、フェミニスト作家のヴァージニア・ウルフの「A Room of One's Own」と見事に呼応しています。
ヴァージニア・ウルフは、作家たち特に女性作家は、創作を行うために生活の基盤が確保されている必要があると考えました。その中には、自分だけの部屋を持つことも含まれます。
ポール・グレアムの原則は、既存の社会構造の中で、自らの努力を追求できるようなスペースを作るということです。
学校を例に挙げると、高校生が受験勉強に向けてダーウィンやニュートンの理論のような科目を勉強するために、自分の興味や情熱を捨てなければならず、それが彼らにとって後悔の種になっていると提言しています。
ポール・グレアムは、子供たちが自分のやりたいことに最大限に取り組むことを選択し、学校の成績は二次的なものであると考えています。Y Combinatorのスタートアップ企業を選ぶ際には、応募者の成績は重要視しません。代わりに、応募者が何をしているのか、自分のプロジェクトでどのような経験を持っているのかをより詳しく知りたいと考えています。
また時には、自分のためにやることと、求められている仕事に共通点があることも強調しています。彼自身、大学でコンピュータサイエンスの授業を受け始めたとき、プログラミングは確かに与えられた課題でしたが、同時に自分のためにやることでもありました。そのため、課題を完了するたびに、スケートボードを練習する時と同じように楽しく、目標を達成するのも早かったとのことです。
求められた任務は、個々の心構えによって「自分自身のために行うこと」であるか、もしくは「試験のため」「お金を稼ぐため」になります。
更に初期のMacコンピューターのチームを例に挙げました。バレル・スミス、アンディ・ハーツフェルド、ビル・アトキンソン、スーザン・ケアなど、自分の情熱に従って行動した人々は、単にタスクをこなしていたわけではありません。スティーブ・ジョブズからのテニスボールを打ち返すのではなく、打ち上げられたロケットに同乗している状態だったと言えます。
アンディ・ハーツフェルトがMacコンピューターについて書いた本の中で、夕食後もオフィスに戻って深夜まで仕事をした様子を説明しています。自分が情熱を注ぐことに没頭した経験がない人にとって、このような長時間労働と過酷な労働環境で働くことは区別がつかないかもしれませんが、実際は比べるまでもなく、全くの別物です。
スタートアップ企業が急速に成長し、高収益を得られる理由の一つは、遊び心とチャレンジ精神を併せ持つ人々が集結しているということです。好き好んで取り組んでいるため、より速く、質の高い仕事に取り組むことができます。
適切な人材を見つけることができれば、明確なビジョンを共有するだけで、自らの判断で手段を選択し、期待以上の成果を上げてくれるはずです。同時に、彼らに裁量権を与え、自由に判断や行動ができるような環境も必要になります。
MixerBoxでは、まさにスケートボードで駆け抜けるかのごとく、軽やかに目標に向かって進んでいける仲間たちを集め、存分に力を発揮できる環境下でチャレンジしています。自分自身のためにしていることであると同時に、「可能性を再定義し、誰もがテクノロジーを簡単に楽しめるようにする」という共通の目標に向かって努力しています。
注釈:Y Combinator、略称YCは、アメリカのシリコンバレーに拠点を置く世界初のスタートアップアクセラレーターです。 MixerBoxは2014年に選出され、YCのトレーニングに参加しました。