YC創設者 ポール・グレアム :ユーザーの声こそ、勝利への近道
YC創設者 ポール・グレアム :ユーザーの声こそ、勝利への近道
YCスタートアップ講座
ポール・グレアム(シリコンバレー Yコンビネータ創設者、コンピュータ科学者、起業家)は、過去のエッセイで、Yコンビネータ(略称YCは、米国シリコンバレーに本社を構える世界初のスタートアップアクセラレーター。MixerBoxは2014年に選定され、YCのプログラムに参加)応募者にとって最も重要なことは「ユーザーから何を学んだのかを説明すること」だと語っていました。

一見単純な問いですが、シンプルな料理ほど奥深く、見事に仕上げるのは難しいものです。この簡単な質問によって、応募者のユーザーへの関心、理解、ニーズを明らかにすることができます。
スタートアップ企業にとって、ユーザーはソフトウェアの利用者なのか、それとも消費者なのでしょうか。
ポール・グレアムにとってのユーザーは、YCが支援するスタートアップ企業であり、音楽家にとっては、音楽鑑賞者であり、教師にとっては、教える対象となる生徒であり、シェフにとっては、レストランで食事をする人々になります。
何をするにおいても、私たちは常に特定のグループに価値を提供しています。そして、そのグループが何であるかを理解することが私たちの責任です。
YCのパートナーはそれぞれ独自の起業経験を持っていますが、ポール・グレアムが最初にユーザーから学んだことは、起業家が直面する問題の大半は類似していているということです。しかし、起業家へのアドバイスは、法則性を見出したり、自動化したりできるほどの万能な対策はありません。個々のスタートアップ企業に違いがあり、YCパートナーはアドバイスする前に、スタートアップ企業の運営に精通したうえで、適切な対応を行う必要があります。つまりスタートアップ企業への指導においては、高度にカスタマイズされたプロセスを必要とします。
ポール・グレアムが起業家を観察して気付いた2つ目の点は、自分の会社の最大の課題を認識できていないことが多いということです。
たとえば、創業者はAが最大の課題だと考え、急いでYCパートナーと話し合おうとします。しかし話し合いを続けるうちにYCパートナーは、解決すべき課題はBであることに気付きます。
創業者が十分なユーザーを獲得できないことを心配しているものの、実際のところ製品がまだ十分な段階ではなかった場合、ポール・グレアムは「もしあなたがこの製品を開発した人でなければ、利用したいと思いますか?」と質問するかもしれません。
製品が十分でないと創業者は分かってはいるものの、その重要性を理解していない可能性があるため、まずは、より重要だと考えているユーザー獲得について議論すべきであると考えたからなのかもしれません。
3つ目の点は、創業者は必ずしもYCパートナーからのアドバイスに耳を傾けるわけではないということです。
ポール・グレアムも、なぜ創業者がそのような行動を取るのか理解するのに多くの時間を費やしました。頑固さが理由のひとつであることはもちろん、スタートアップには多くの常識にとらわれない要素が含まれていることを発見し、常識を覆すアドバイスをすると、創業者の過去の経験とは違う、間違った提案と捉えられやすく、結果的に意見を受け入れてもらえにくいということです。
YCパートナーの多くは元起業家であるため、スタートアップの道は直感に反することが多いことを知っています。なぜなら、その苦難と喜びを実際に経験した人だけが、その本質を理解できるからです。創業において直感に反することが多いという特性があるからこそ、YCが役割を果たしていると言えます。創業者たちが頼りにしている部分でもあるからです。
ポール・グレアムのアドバイスは、「己を知り相手を知れば、困難に打ち勝ち負けることはない」という言葉でまとめられると考えています。
顧客や上司と接する際、相手の「なぜ」を理解することで、「問題解決への道」がより早く見つかる可能性があります。
YCの成功企業を見ると、ユーザー中心主義が成功の鍵であることは明らかです。
ポール・グレアムの原文を見たい方は、こちらをご覧ください。https://paulgraham.com/users.html